空と砂しかない世界だった。フロントガラスが映す果てしない砂漠を眺めながら、運転席に座る櫻井さんは、「わざわざこんなところまで、すみません」と苦笑いした。
「超興奮しています」、わたしは応える。「こんなところでSAKEが造られている、それは希望でしかない」と。
米アリゾナ州、人口たった5000人の町ホルブルックでArizona Sakeを営む櫻井厚夫さんのもとを訪れた矢先のことだった。一泊二日の弾丸旅行から帰り、長距離移動の倦怠感にどこか心地よさすら覚えながら、布団に潜ろうとしていたとき、Twitterのタイムラインに下記のニュースが流れてきた。
「日本酒づくり、新規参入を許可へ 輸出向け特化 政府が酒税法改正へ」
ついに、このときが来た!