現在、兵庫県西宮市の白鹿記念酒造博物館で開催されている展示「酒からSAKEへ」を通して、日本酒の海外進出の歴史を追うレポートが公開されました。
海外流通・現地醸造を専門としているわたしにとって垂涎もののテーマでしたが、一部屋のコンパクトな展示ながら、密度が濃くて素晴らしい。海外流通についてはデータがきちんとまとまって/残っていないケースが多く、これだけ調べ/集めることがどれだけ難しいかを実感しているので、ただただ「学芸員」のお仕事を尊敬しました。
当記念館は、日本酒蔵が所有する資料館としては珍しく、博物館の専門職である学芸員を雇用しています。担当の大浦さんは学生時代に帳面(お金の記録)を読み解くご研究をされていたそうで、「帳面にはストーリーが詰まっている」といったことをおっしゃっていたのが印象的でした。二者間のお金のやりとりが主観などを混えずに残されているため、どんな情報よりも客観的なんですね。最近、確定申告で領収書の整理をしながら「あ、これはあのときの……」としんみりしていたのでなんとなくわかる気がします。
このレポートにも割としっかりまとまってはいるのですが、個人的には、機会があれば期間中にぜひ現地を訪れていただきたいものです。というのも、やはりこれだけ資料的価値の高いものにはきちんと課金されてほしい……というのがあるので(笑)こうしたお仕事がきちんと評価され、これからさらなる研究が進むためにも、ぜひその価値を認めていただきたいものです。