新品種は日本酒の救世主となるか?品種開発、成功の鍵を探る:気候変動と酒米【後編】

どこに着地させるか? でやや悩ましかった特集「気候変動と酒米」でしたが、後編がリリースされました。求められつつも必ずしも上手くいっているとはいえない高温耐性米の開発について考察しています。

インタビューをしたのは、SAKE Streetにも寄稿してくださっている島根の米農家さん。冬期は酒蔵で酒造りに従事していらっしゃる農家さんで、大変スマートで的確な意見をいつも発信されています。こうしたご意見を聞けるのはとてもありがたい機会です。

そのうえで、品種開発に成功していると見られる山形県にその取り組みについてお話を聞いております。みんながこうだったらいいのに! と思いつつ、山形県だからこそ成し遂げられたこと、も理解できて、せめてモデルケースとしてもらえたらなぁと願うばかり。

今回少しずつ触れながらきちんと取り上げられなかった価格高騰問題については、別途記事を制作する予定です。

世界10か国以上で展開するフランスの日本酒ブランドが日本初上陸—酒販や飲食のプロフェッショナルが語る「HEAVENSAKE」の魅力

海外で立ち上げられた日本酒ブランド「HEAVENSAKE」の日本進出にともない、スポンサー記事の取材・執筆を担当させていただきました。

HEAVENSAKEは在米時から知っていたのですが(True Sakeで取り扱いがあったので)そのころよりも格段に成長しているよう。いまでやさんとパートナーシップを結んだことには驚きました。

シャンパーニュのアッサンブラージュのお話を聞くのはIWAのリシャール・ジェフロワさんに続き二人目なのですが、日本に従来からある日本酒のブレンドの概念とは違うんだなと大変興味深いです。その酒蔵の味を感じさせつつ、その酒蔵が決してできない表現をする、すごく楽しい試みだと思います。

義侠、我山、奥……愛知県の酒蔵に支えられて生まれ変わる水谷酒造のいまとこれから

2024年5月の火災から一年。若手女性蔵人・後藤実和さんが働く愛知県の水谷酒造は、現在、同県のさまざまな酒蔵さんの力を借りながら、共同醸造という形で「千瓢」「千実」を造っています。

火災の起きた当初、何か自分にできることはないかと思いましたが、近隣の澤田酒造さんにすぐさま取材をしたSAKETIMESの対応力に感動しました。

そこから一年、自分に伝えられるのはいまの姿について飾り気なく伝えることだろうなと。義侠、我山、奥、蓬莱泉と、多くの蔵に支えられて醸造している水谷酒造。その軌跡をぜひ追い続けていただければうれしいです。

猛暑が変える、米づくりと酒づくり。農家・酒蔵が模索する対応策とは:気候変動と酒米【前編】

猛暑における米の不作や価格高騰が問題になっています。お米を主原料とする日本酒ももちろん他人事ではありません。じゃあ、どういう関係があるの? ということで、今回は気候変動にともない酒蔵がどのような状況に陥っているのか、米に関しても深い知見を持つ宮城県・新澤醸造店&兵庫県・剣菱酒造の2軒に取材をしました。新澤醸造店は関連会社として精米企業「ライスコーポレーション」を運営していますが、そちらのご担当者にも取材しています。

解決策の一手として講じられている高温耐性米ですが、現場では「技術でフォローできるし、米を変えるリスクが大きい」との声も。これについては、後編で取り上げていく予定です。

原点に帰り、町と日本酒の未来を切り拓く – 地域の魅力を、一緒に醸してみませんか?

福岡県福智町のクラフトサケ醸造所誘致プロジェクトに、同エリア出身の中山雄介さんが挑戦。クラウドファンディングに伴うPR記事の取材・執筆を担当しました。いわゆる“クラフトサケ”(同醸造所はまだクラフトサケブリュワリー協会に所属していないのでこの言葉は適さないのですが)の現象を追い続けたい人間としては、とってもうれしい案件です。

中山さんは私のSAKETIMESでの記事をきっかけに、「地元がクラフトサケ事業をしようとしている。自分しかやる人間はいない!」と今回の立ち上げに応募したのだそう。自分の記事をきっかけに酒造りを始めたという人はこれまで何度かお聞きしていますが、なんともすごいご縁です。

5月には醸造所も完成し、いよいよお酒の製造をスタート! 日本酒らしさを大切にする、日本酒ではないお酒。どんなものが上がってくるのか楽しみです。

「獺祭はうまくいっていない」—旭酒造 桜井会長が語る「獺祭」の現状と未来

獺祭の2024年度の売上が195億円。Clear代表・生駒さんがこちらに衝撃を受け、ニューヨークへ飛び、同社の桜井博志会長にインタビューをしてきたものを、記事化させていただきました。

記事化していない部分も含めてお話を聞かせてもらえるのがこの仕事の醍醐味ですね。以下、グッときた桜井会長の言葉を引用しておきます。

生駒:とはいっても、売上の年間目標みたいなものはあるんですよね?

桜井:そんなもの、考えたこともないですよ。

桜井:(中略)希少性を売り物にするのは酒蔵の都合でしょう。それは販売自体が目的化してしまっている。欲が最初に出てしまうと、ビジネスは成功しないですよ。

桜井:(中略)私が日本酒業界に入った1973年には3,300社もの酒蔵がありましたが、売上で見ると、他業種でいえば数十社程度の市場規模しかない。
そう考えると、現在は1,200社ほどに減少していますが、激烈な淘汰はまだ起きていないんですよね。新規参入も起きていないけれど、淘汰もされていない。これが一番のネックじゃないかと思います。

味が変化しづらいお酒とは?品質を守るための日本酒輸出ガイド:製造編

輸出したお酒のコンディション変わっちゃう問題、前編ではコールドチェーンを中心とした物流を取り上げましたが、後編は製造編。造りによって、輸出においてもいわゆる“へこたれない”お酒を造るにはどんなポイントを押さえるべきか、という話をしております。

江戸に届いたお酒が灘から出荷されたときよりも美味しかったというように、お酒は旅の中で変化をするものですが、望ましくない変化は防ぎたいもの。そして悲しいことですが、いまだに「劣化したお酒を海外に流す」という傾向はあるようです。

日本から海外諸国への誠実さの表明として、最後の味わいまで責任を持つことの重要性を説いていこうと思います。

圧倒的な実績がなければ、世界は変えられない—高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」が新商品「弐光」の先に描く未来

SAKETIMESにて、運営会社Clearによるラグジュアリー日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」についてのお話をお聞きしました。

日本酒の高級酒は「幻」性(希少性)を付加価値にすることが多いですが、量を展開しなければ本質には至らない。定量的な強さを模索するSAKE HUNDREDは、お世辞などではなく良いブランドだなと思います。

生駒さんにインタビューするのはもう何回目かな、というほどで、だんだんどの記事で聞いた話か混同するようになってきました。お話を聞いているといつも刺激になるし、ワクワクします。

同時期におこなわれた、SAKE HUNDREDのプレス向けイベントにて、「生まれ変わっても日本酒の仕事をしたい」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。自分はというと、「生まれ変わったらその時代の日本酒が飲みたいな!」と思いました。

酒造りをもっと自由に。日本酒の自家醸造をベースにした新しいかたちの醸造所 – 宮城県・Fermenteria

宮城県は仙台市・勝山酒造の蔵元に生まれ、海外向け自家醸造キット「MiCURA」を立ち上げた伊澤優花さんが仙台駅にSAKE醸造所をオープンしたということで、訪問してきました。

酒造免許が下りるまでの穴埋めとして開発したノンアルコール飲料「ライスブリューミルク」(甘酒のようなもの)をいただいたのですが、いま思い出しても「また飲みたいな」と思わされるくらい美味しかったです。ココナッツと米発酵飲料って合うんですね。

優花ちゃんは兼ねてから個人的な友人でありつつ、昨秋にお家騒動が話題になり心配していたところもあったのですが、ここに書かれていないいろんなお話を聞けてよかったです。彼女と話していると本当にお酒造りが好きなんだなとしみじみ感じます。愛ある人が評価される世界を作れるよう、私も頑張らなければ。

「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録。日本酒のPRで注意すべき点は?

ユネスコ無形文化遺産に日本の「伝統的酒造り」が登録。「時間経過による価値が低減しないこと」を理念にしているSAKE StreetはBreaking NewsよりもInvestigative Reportingタイプのメディアなんですが、珍しく速報性のある記事として、登録発表当日に公開されました。

「伝統的酒造り」の定義について解釈が分かれたり揉めたりしないでほしい、と思い、文化庁にインタビューを決行。結果として混乱を抑えるのに少しは役立てたのではないか、と自負しております。内容への正しい理解を前提に、良いプロモーションにつながっていけばと思います。